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2025.11.25

上山神社の新嘗祭。

お米づくりの一年を締めくくる、静かな感謝の日。

11月23日、今日は 新嘗祭(にいなめさい)。勤労感謝の日でもあります。
日本の稲作にとって、とても大切な節目の日です。

新嘗祭とは「その年に収穫した新米を神さまに捧げ、恵みに感謝する日」。
昔から「国家的な収穫感謝祭」といわれていて、天皇陛下がその年の新米を最初に口にされる日でもあります。 それだけ“お米”が日本の暮らしと文化の中心にあったということです。
お米づくりをしていたら、天気も毎日気にするし、水が田んぼまで届くかどうかが毎朝気になるし、自然のサイクルを意識した暮らしに切り替わります。
毎日の小さな変化に気づくようになります。

その移ろいの中で神社の祭りには昔からのお米づくりに則した形で元旦祭~夏祈祷~秋祭り~新嘗祭と節目に祭りがあり「ハレ」と「ケ」も意識するようになります。

上山棚田で暮らすようになって14年目。
この日を迎えるたびに、お米づくりのリズムに自分の暮らしが結びついていることをしみじみと感じます。

「ハレ」と「ケ」──日常と非日常が交互に訪れる暮らし、とも言えます。
昔の日本では、ケ(=日常) の中に淡々と暮らしがあって、そこに ハレ(=特別な日) が時々やってきた。
ハレの日には村の人が集まり、お米や酒、野菜をお供えして、
「今年もよろしくお願いします」
「ここまで無事でした、ありがとうございます」と手を合わせたくなる。

田んぼに立って空を見上げながら、
「ハレとケってこういうことだったんだ」と気づくようになる。
毎日は“ケ”で、頑張った日々の積み重ねの先に、季節ごとの神社に訪れて“ハレ”がちゃんとやってくる。
その“ハレ”があるから、また一年頑張れます。


■ 鳥居をくぐる。上山神社の「一年の入り口」に立つ。

朝の光に照らされた上山神社の鳥居。
この鳥居をくぐるとき、毎年「今年も無事にお米づくりがひと段落してやってこれた」という気持ちになります。

鳥居は“俗界と聖域の境界”。
ここを一歩くぐるだけで背筋がすっと伸びるのは、その境界を実は身体が知っているからかもしれません。


■ 狛犬(こまいぬ)は、集落の“門番”のような存在。

狛犬は、神社の入り口を守る“結界の象徴”。
集落の平穏、農作物の無事を祈り続けてきた、いわば「地域の門番」です。

縄と紙垂(しで)が掛けられているのは「祓い清め」の意味。この縄も上山棚田で生産された稲原です。 一年間の田んぼのケガも、苦労も、ここで一度預かってもらうような気持ちになります。


■ 石段の先にある本殿へ。

上山神社の石段。
この登り道が、まるで一年間の米づくりの道のりそのもののようです。八十八段かどうかは数えていませんが。田植え、草刈り、水路掃除、水路整備、獣害対策、、稲刈り脱穀、片付け(まだ全部終わっていませんが)、「一年に一回しかできない仕事」だからこそ、毎年積み重ねていくしかない。ものです。
最近は上山地区の中で大芦、八伏、後逧と、標高200〜500mで地形も日当たりも風も違う田んぼを3ヶ所やっています。

「一年に一回しかできない経験だけど、場所を変えれば経験値は3倍になる」
楽観的にそう思うようになってから、学びが一気に深くなりました。


■ 新嘗祭の「神札」

左は伊勢神宮の「天照皇大神宮」
右は上山神社の「新嘗祭神符」。

毎年、この札を家や作業場に祀りながら、
「今年も無事に暮らせますように」
「良いお米ができますように」
そんな気持ちで一年が巡っていきます。


法人化して7年目。
決して楽な道ではなかったけど、なんとか生き延びています。

上山地区も“高齢化が通り過ぎた集落”になりつつあって、
もう高齢者の人数自体が少なくなってきています。

でも、悲観はしていません。

むしろ最近は、
「ようやく次の段階が見え始めている気がする」
そんな感覚があります。

・泥にまみれて草を刈る暮らし
・山と風と雨を相手にする稲作
・地域の人と季節を分け合いながら暮らすこと

こういう“手間のかかる暮らし”は、AIでは代替できないもので
いまの若い世代にとって「やってみたい暮らし」「憧れの暮らし」になりつつあるからです。


■ ここで積み重ねてきた営みが、次の文化になるように。

改めて、ここで暮らしてきた先人たちに感謝して、
泥にまみれ、草を刈りながら、今まで農に関わって来てない人とも一緒に次の文化を育てていく暮らしを続けていき、子供たちが「ここで暮らしてみたい、挑戦してみたい」と思うことがひとまずのゴールかと考えています。

今年も無事に種まき〜収穫まで辿り着けました。
関わってくれた皆さん、本当にありがとうございます。

来年のお米づくりもどうぞよろしくお願いします。と神社にお参りいたしました。

Tsunag合同会社では次の春から共に動ける地域おこし協力隊を募集しております。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「ここでは“暮らし”がキャリアになる」 ― 岡山県美作市・上山の“狩猟×棚田”地域おこし協力隊(企業研修型)募集 ―

2025.09.05

コウノトリが来た!“冬に田んぼの水を張る”実験の1年。収穫後に検証してみた

冬期灌水田んぼ、稲刈りまで終わって一区切り。

2024年収穫後の秋冬から始めた“冬期灌水”。
大芦での実践1年目、無事に収穫までたどりつけました。
そして生き物の力をお借りしてのお米づくりを目指してたまたまではありますが
今日2025年12月2日、コウノトリと思われる鳥が冬水田んぼに飛来しました。
見つけてくれたのは移住者仲間のくまさん。

生き物が増えていく田んぼを目指してやってみて、
生き物でも目に見えるものと目に見えにくいものがあり
結果から言うとコウノトリが来てくれたことは論より証拠でとても勇気づけられました。
(なんかたまたまだとしても来る理由が何かあるはず)


そして収量は反あたり4.5俵ほど、無肥料。美味しさもあり満足。
前半田植え後の水や草の管理、後半の除草、そしてケガなど課題もありつつ、
「この条件なら悪くない」と言えるチャレンジだったと思います。

なるべく工数を抑えつつも自分たちが安全で美味しい、周辺自然環境にも配慮したお米づくりを確立していくために実験を続けていきます。

できたお米は田んぼに関わってもらった人にも届けていきます。


▽冬期灌水とは?
めちゃくちゃ簡単に言うと冬の間も、田んぼに水を張り続ける農法です。
目的は主にこの3つ:

  1. 春の草の発芽を抑える(酸素・光を遮断)
  2. 微生物環境を安定させる、生き物を増やす
  3. 春の代掻きを軽減できる

“なるべく耕さないで育てる環境を整える”という、再生型農業的なアプローチにも近い技術。でも始めて何年かは耕す必要もあるし、よく観察してノウハウを蓄積していきたい。


▽やってみて分かったこと

【◎良かった点】

  • 草の発生はある程度抑えられたところもあった
  • しかしまったく抑えられなかったところが多かったので、環境配慮の除草剤も1-2回使用(タイミング遅かった)
  • 初期の生育が安定、場所によって分けつがよかった稲も。1株40‐50本ほど
  • 代掻き時にすでに水が張っているのでトラクター作業の省力化
  • 冬~春、カモなど野鳥が田んぼにいることが多かった
  • 米がうまかった
  • 12月2日にコウノトリが来た、翌日もいた

【▲反省点】

  • 観察を良くする、藻が発生したのでその対応と活かし方
  • 除草剤は使ったがホタルイ、コナギが繁茂した
  • 代掻きの回数を増やす必要性あり(草対策として)
  • 下記写真の右側はホタルイやコナギなどあります。

今回チャレンジできているのは、以下の条件があるからでしょうか。

  • 冬でも水が取りやすい湧き水が上流にある
  • 個別に水位調整できる
  • 他の農家に迷惑がかからない、小言を言われない
  • 地域の水利ルールに反していない
  • 周囲に理解がある、もしくは誰もいないなど

これらが揃ってない田んぼでは、信頼関係が不足しているとやらない方が安全。


▽雑感

  • “自然に優しい”ではなく、“条件が整ってるからやれる”、こともある
  • 草を生やさないのではなく、“草との付き合い方を変える”
  • 次年度はもっと収量あげたい、最低反5俵とか
  • フクヒカリは実験的に種を継いで10ー20年でこの環境に適応するか試してみたい
  • 品種は変えてみてGW田植えにするか、8月末~9月5日までに刈り取り出来たらかなり良い
  • 稲が倒れないように、病気にならないように
  • 稼働時間は改めて数えてみるが2.5反で100時間いくかなぁ?もうちょっと少ないか

来年は草対策のために代掻きの回数を増やす方向で検討。棚田でも圃場整備が入った1反前後の田んぼなら条件が合えば冬季潅水栽培での道筋が見えるはず。

参考までに 冬期灌水田んぼの雑草対策スケジュール(美作市上山地区@大芦・田植え5月中旬)

> 秋〜冬(稲刈り後〜翌年2月)
・稲刈り直後から 常時湛水(5〜7cm)をキープ
・藁は表面に残す

> 早春(3〜4月)
攪拌(軽代掻き)を2回
1回目:3月末
2回目:4月中旬
※この間も水は絶対に抜かない。

>田植え前(5月上旬〜中旬)
・スターレーション代掻き
・5月上旬に代掻き → 1週間待つ
・その間に草が発芽 → 田面を再度軽く攪拌して埋没
・その後に本代掻き → 田植え(5月中旬)
この「一度草を生やして潰す」工程が最大のポイント。

>田植え直後(5月中下旬〜6月)
・深水管理(5〜7cm)を2〜3週間維持
→ コナギやホタルイは光不足で抑制。
・初期除草剤か余裕があればチェーン除草機 or 手押し除草機を1回以上
→ 初期の草を対応。

>中後期(6月下旬〜7月)
・手取り除草は最低限
→ 中期以降の発生は、稲の葉が茂ればある程度抑えられる。
→ なるべく「草に種を落とさせない」
・このサイクルを2〜3年続け、コナギ・ホタルイを減少させたい。

>稲刈り(8月末か9月はじめ)
>そしてまたコウノトリが飛来してくれるお米づくりを継続する。

大芦高原でのお米づくりに関して一年後までの稲作スケジュールと目標がなんとなく決まった。
「来年もコウノトリが来てくれる田んぼとする」
「コウノトリが居着いてしまう田んぼづくり」

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2025.04.21

【これがあれば、僕は死なない】大学では学ばなかった、リアルな「生きる力」

「自分にとってのセーフティネットって、何だろう?」

大学時代から、ずっと考えてきたテーマです。 その原点は、大学時代にネパールの農村に3回行ったことにあります。 そこでは、貧困率も高く、識字率も低く、仕事も限られていましたが、 「家族と共に、今日をちゃんと生きていけること」が、何よりも大切にされていました。

お金がなくても、教育が受けられなくても、毎日の食事をみんなで囲み、助け合いながら生きていく。 そこで暮らす現地のお母さんが言っていた「家族でご飯を囲めることが幸せです」という言葉の“強さ”や“安心感”が、今でも心に残っています。

あのとき、「自分にとってのセーフティネットって何だろう?」という問いが、僕の中に生まれました。 それは今でも続いているテーマであり、棚田での暮らしを通して、自分なりの答えを少しずつ探し続けています。

ちなみに、この場においての「セーフティネット」とは、経済的・精神的なリスクに備えて安心感を与える仕組みやつながり、あるいは物事の判断基準になるモノサシのことを指します。 例えば、マイホームがあること、お金、社会的地位、社会保障制度や保険、SNSのフォロワー数、信頼できる人間関係、趣味などがセーフティネットとして機能することがあります。

■自然からのお裾分けで暮らす技術が、“生きていける安心感”をくれた
「これさえあれば、とりあえず死なない」 そんなふうに思える“生きる力”を、僕は上山棚田での暮らしの中で少しずつ身につけてきました。

①食べ物をつくれること=「餓死しない力」
お米が自分でつくれる。 それだけで、どんな状況でも「なんとかなるかもしれない」と思えます。 スーパーが閉まっても、物流が止まっても、自分の田んぼで収穫したお米があれば、家族は飢えることはありません。 これは、どんな立派な資格や技術よりも、僕にとっては安心材料です。 お米は、たとえ素人でも稲を植えることができれば、実りを得られる可能性があります。
稲の育て方や農法、肥料や薬の使い方には人それぞれ考え方があります。 でも大切なのは、今まで土地を守ってきた地主さんへの感謝を忘れず、獣から農地を守り、次世代へ引き継いでいくこと。 それができれば、稲作はきっと続けていけると信じています。

    ②タンパク質を得られる手段がある=「捕まえて、食べる力」
    獣や魚を自分で獲って食べる──大学時代の僕には想像もできませんでした。 ネパールから帰国後、さまざまな地域を訪れ、狩猟に出会いました。 そのとき、千松信也さんの著書『ぼくは猟師になった』を読みました。 罠で鹿やイノシシを捕獲し、自ら捌いて食べること──本を通じてその魅力が伝わり、「自分もやってみたい」と強く思うようになりました。
    今では、狩猟を通じてジビエ(野生肉)を得る技術を学び、「肉は山からいただく」「自分で捕まえる」という選択肢が持てるようになりました。 僕にとっての狩猟は、獣害対策のためでも、社会貢献のためでもありません。 まずは鹿やイノシシを捕まえて食べるというワクワク感や、美味しく食べたいという好奇心を満たす手段です。

      ③火を扱える
      田舎では、電気やガスが使えなくても、木を伐り、薪を割り、火を起こして料理をしたり暖をとったりすることができます。 火を使える環境があることは原始的で、圧倒的な安心感につながります。 薪でご飯を炊く、焚き火で体を温める──それだけで、ほっとすることができます。
      また、僕たちは何度も耕作放棄地の野焼きを経験してきました。 草を刈る、防火帯を作る、風下から火をつけるなど、安全に延焼させないための工夫を重ねてきました。 だからこそ、火の怖さも知っていて、火を扱う際の危機感は人一倍持っているつもりです。最近は消防団活動を前よりしているので余計に火事で皆さんに迷惑をかけてはいけない思いが強まっています。余談ですが、もし火事になれば消防団20-30人が半日かけて時間を費やして消火活動や見守りに来てくれます、しかも皆さん自営業などの方が多く集まることになってしまい、とても申し訳ないことです。

        ④棚田には、“そもそも暮らしが続いてきた条件”がそろっている
        地震が少なく、気候が安定し、人力でも農業や水の管理ができる場所。 そんな場所が、実際にあるのだと、暮らしてみて気づきました。
        上山の棚田は、何百年も前から人々が自然と折り合いをつけながら暮らしてきた場所です。 「ここでなら生きていける」と思わせてくれる──それは、長い歴史の中で積み上げられた信頼なのだと思います。この地域では、1000年以上ものあいだ、お米がつくられてきました。 これからも、100年は続けていける素地があると感じています。
        圃場整備された大規模農地は、水路や取水口、ポンプも完備されていてとても効率的ですが、そのぶん維持や更新には大きな費用がかかると、知人の農家から聞きました。 一方で、非効率的な棚田では、小さな穴があれば、石と草の根付きの土を詰めて埋めることもできます。
        この長年守られてきた水路や農地を、現代の技術と話し合い掛け合わせながら次世代へ繋いでいくことに、大きな魅力を感じています。

          ■まちの暮らしでは切り捨ててきた“手間”や“技術”にこそ、本当の安心がある
          もちろん、町には町の便利さや楽しさがあります。 しかし、お金や便利さ・テクノロジーに頼りきった暮らしで、物事や食べるものの前後の関係性を考えない暮らしに疑問をもつことはありますか?
          棚田での暮らしで得ているものは、どれも手間がかかり、泥にまみれ、お金に直結するわけでもないものが多いです。 でも、それらは間違いなく“自分や家族の命を支えてくれる力”になっています。

          ■「生きる力」をひとつずつ積み重ねていける場所が、ここにある
          だからこそ、僕は棚田に暮らしの拠点をつくっていくことに意味があると思っています。
          ここには、自然の恵みだけでなく、昔から受け継がれてきた知恵や技術があります。 世の中がどんなに変わっても、「これがあれば、生きていける」と言える自分でいられるようにしていきます。
          そんな思いで、今年も草を刈り、お米をつくり、土に触れています。 そして、この技術や思いを子どもたちにも伝えていきたい。 どこでも生きていける、頼りにされる人になってほしいと願っています。

          ■最後に、あなたに聞いてみたいこと
          僕にとってのセーフティネットは、米を育て、火を焚き、自然の中で暮らす技術かもしれません。 でも、それは人それぞれ違っていて良いはずです。だからこそ、読んでいただいた方にも聞いてみたいです。 「あなたにとってのセーフティネットは何ですか?」

          僕が大学のときにネパールで出会った人たちのように、「今」を支えてくれるものあること。
          それがどんな形でもいいから、ひとつでも見つかっていれば、生きていく上で大きな支えになるのではないでしょうか。

          もしよろしければ、こっそりコメントでも何でも構いません。これを読んだ感想でもなんでも教えてください。 みなさんのいいねとコメントが、僕にとっては次のブログを書く力になっています(笑)

          今日4月22日は苗づくり@大芦で60枚(3反用)の苗をつくりました。
          それはまた書きます。

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          2025.04.14

          大芦コモンズ活動レポート【第3回/2025年4月12日開催】

          春らしい陽気に包まれた4月12日、第3回目となる大芦コモンズの活動を開催しました(翌13日はあいにくの雨でお休み)。今回も、3名の方にお越しいただき、にぎやかな一日となりました。

          「お互いの“やりたい”を形にできる場所にしたい」──そんな想いを胸に、大芦コモンズでは少しずつできることを積み重ねています。

          作戦会議からスタート
          この日の活動は、大きな地図を広げての作戦会議から始まりました。大芦コモンズで管理している古民家や農地、山林を俯瞰しながら、「ここをどう使ったら面白くなるだろう?」と、みんなでアイデアを出し合いました。
          なかでも山の中に“ジップスライド”をつくる構想には、子どもも大人もわくわく。雲海を見ながら空を滑るように山を駆け抜ける日が来るのが、今から楽しみです。

          お米づくりの第一歩
          午前中は、お米づくりの第一歩となる「塩水選(えんすいせん)」と「温湯消毒(おんとうしょうどく)」を行いました。これは種もみの選別を塩水の塩分濃度で調整し、実の詰まった種を選別します。生卵が浮かぶぐらいの濃度で行うと良いので生みたて天草大王の卵で行いました。
          温湯消毒は殺菌(60度10分)をする大切な工程、農薬を使うより手間はかかるものの、農薬減によるコスト削減や廃液処理が不要などのメリットがあります。温度計で湯加減を見ながら10分間集中し、時間が経過したら急いで水で冷やします。その後は4月22日の苗箱づくりに向けて積算100度、芽出しが出来るように水を交換しながら様子を見ます。
          いよいよ今年のお米づくりが始まります。そのあとは、山に入って椎茸やタラの芽を採取。旬の恵みをみんなで天ぷらにして、お昼ごはんとしていただきました。自然の味をそのまま感じられる、贅沢なランチタイムです。

          午後は獣害柵の整備
          午後からは、みんなで獣害柵の整備へ。作業をしながらの会話や笑い声が飛び交い、共同作業ならではの一体感がありました。作物を守るためのこの作業も、地道ですが少しずつ進めています。

          ご参加くださったみなさん、本当にありがとうございました。
          お昼ご飯はみんなで作って、こんな感じでした。

          次回のご案内
          次回の活動は【2025年5月10日(土)〜11日(日)】に開催予定です。
          予定している内容は…
          ・大芦田んぼでの田植え体験
          ・畑づくり
          ・獣害柵整備

          子どもから大人まで、どなたでも大歓迎です!自然の中で、手を動かして、美味しいお米食べて一緒に楽しみましょう。

          【番外編】お米の苗箱づくりもやります!
          4月22日(火)9:00〜は番外編として「お米の苗箱づくり」を行います。興味のある方は、ぜひ一緒にやってみませんか?ご興味あればコメントかDMくださいませ。

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          2025.04.11

          田舎で生き抜く力は、一気に身につかない。でも、一歩ずつ

          僕たちは、棚田が広がる地域の一番標高の高い場所で、5人家族で暮らしています。 山も星もすぐそばにあり、自然に囲まれた毎日です。

          今回は、そんな日常の中で「田舎で生き抜くスキル」をどうやって身につけてきたのか、僕自身の実例を紹介したいと思います。 “自然の中で暮らし続ける”ために気づいたことや、小さな工夫をお裾分けできたらうれしいです。棚田で過ごす毎日が、気づけば“自分の強み”にもなっていました

          ■「ひたむきにやる」ことがスタート
          上山の大芦(おおあし)に引っ越してきた当初は、やりたいことが山ほどありました。
          ・草刈りがうまくなりたい
          ・チェーンソーを使いこなせるようになりたい
          ・古民家に暮らして、かっこよくDIYしたい
          ・お米を育てたい、野菜も全部自給したい
          ・鹿やイノシシを捕まえて、食べてみたい

          そんな“生きる力”をすべて身につけたくて、がむしゃらに行動しました。 でも現実は、寝る間を惜しんでもすべてを一度にはできません。 だから、ひとつずつ。完璧でなくても、「田舎の人に笑われない程度」になるまでやってみる。 そうして、自分なりのペースと集中すべき時間が見えてきました。

          ■まずは棚田や竹林と向き合った3ヶ月
          草刈り機やチェーンソーを使えるようになりたくて、3ヶ月間ひたすら竹林と向き合いました。 面積は2ヘクタールほど。何万本あるのかわからないほど伐採し、それをみんなで野焼きしました。
          毎日作業する姿をリアルでもSNSでも発信し続けると、景色が変わり、竹林がなくなっていく様子が地域の方々にも伝わりました。 きっと「名前はわからないけど、よく頑張っている人」として認識してもらえていたと思います。
          途中、足の親指を切り落としそうになったこともありました(ヒヤッとしたら本当に血が出ていた……)。 助けを呼び、救急車で病院へ。到着後に「順番待ちです」と言われ、つい怒ってしまったのを思い出します。
          こんな経験を通じて、草刈り機やチェーンソーを田舎の人並みに使えるようになりました。

          ■古民家改修は“なにも考えずに片付け3日・解体改修3ヶ月”
          暮らす家も自分たちで直したくて、まずは片付けから始めました。 40年以上空き家だった家は、床が抜け、屋根も落ちていて、どこから手をつければよいのかわからない状態です。
          まずは周囲の木を伐採し、燃やしてきれいに整えてから、ひたすら中の物を運び出しました。 「3日」と書きましたが、実際は3日では終わりませんでした。
          その後は解体作業。床をはがし、壊しすぎたこともありました(今では反省しています)。 動画を見たり、先輩に教えてもらったりしながら、床下の束(つか)を立て、床を張るまで、素人なりに3ヶ月かけて取り組みました。
          デザインはともかく、今まで10年もっている強度は実感しています。 「次はもっと精度の高い、かっこいい床に張り直す」予定なので、興味がある方は次の冬に一緒にやりましょう。

          ■お米づくりは1年に1回だから、毎年が勝負
          お米づくりは年に一度の本番。 だからこそ毎年が勝負で、試行錯誤の連続です。
          棚田のメリットは枚数が多いこと。一枚一枚をしっかり観察して特徴を見極めることで、広い農地では得られない経験を積むことができます。
          移住して3年ほどは、耕作放棄地の再生、水路の復活、田んぼの勾配調整、水管理……。 脳みそが溶けそうになるほど、トラクターに乗って代かきに没頭しました。
          僕たちNPO法人英田上山棚田団では、耕作面積17反、120枚ほどの棚田を管理しています。 地域の方々が管理している棚田も含めると、さらに広範囲です。若い世代がこれだけの規模の棚田を維持管理している地域は、なかなかないのではないでしょうか。
          もちろん、大規模農業と中山間地での稲作は全く違います。 効率化を意識しながら、棚田での稲作の楽しみ方をこれからも模索していきます。
          今年は冬季潅水の田を2枚するのでそこも実験として楽しみです。

          ■チェーンソーはさらに使い込んでみる
          竹林の伐採には慣れてきましたが、針葉樹や広葉樹の伐採はまだ未熟でした。 そこで山林3haの間伐に取り組み、1ヶ月間修行しました。
          50年生ほどのスギやヒノキの山を冬場に通い、毎日のようにチェーンソーで伐採。 倒れ方や木の裂け方によっては命の危険を感じたこともありましたが、なんとか無事に生き残っています。 林業の怖さを身をもって体験しました。

          ■狩猟は「今年こそ!」を何年も繰り返している
          狩猟免許は2013年ごろから持っていますが、「時間がない」と毎年のように言い訳していました。 それでも毎年「今年こそ本気でやるぞ!」とあきらめずに取り組み続けています。
          今では年間20頭前後の捕獲ができるようになり、ジビエの処理場や加工場も整ってきました。 あとは、しっかり捕獲・解体して販売していく段階です。
          協力者、募集中です。ジャーキーを食べてみたい方も、ぜひご連絡ください(笑)。

          ■理想の暮らしには、まだまだ届かない
          「なんでも自分たちでつくる自給自足」の暮らしには、10年以上たった今でもまだ届いていません。 周囲を見ても、「あの人たちすごいな……」と思うことばかりです。
          それでも、自分たちで育てたお米を食べ、ジビエでたんぱく質をとり、「野菜はこれからがんばろう!」という段階まではきました。
          これまでの経験から「やればできる」という自信がつき、日本中どこでも暮らしていけるという手応えを感じています。
          隣の芝生は青く見えるものですが、だからこそ、ここで生きていくことに価値を見出し、子どもたちが将来ここを選びたくなるような暮らし方を見つけていきたいと思っています。

          ■最近の畑仕事は、子どもと一緒に
          最近は、一人では難しいことも増えてきたので、どうやって子どもたちを巻き込もうかを日々考えています。一緒に育てるものを選んだり、「今日こんなに伸びてる!」「赤くなってきたね!」と声をかけ合ったり。 そんなやりとりの中で、子どもだけでなく、自分自身にも新たな“気づき”が生まれる毎日です。

          “やってみたい”を“できる”に変えていく場所として、ここでの暮らしをしていきます。

          あなたの「やってみたい!」を一緒にチャレンジ出来たら!
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          2025.04.06

          「学生時代なんにもなかった僕」が始めた、ちょっと変わった田舎暮らし

          春になると毎年、「今の自分の選択、合っていたのかな?」って考えることがあります。

          あれは2011年の3月。まわりが就職を決めていく中で、僕は「地域に飛び込んでみよう」って、就職じゃなくて田舎での暮らしを選びました。
          お金もない。知り合いもいない。彼女もいない。
          そんな僕でしたが、なぜか「なんとかなる」って気持ちだけはありました。
          それは、大学時代に出会ったいろんな大人たちが、僕の背中を押してくれたから。

          大学時代から岡山県美作市の「上山(うえやま)」という棚田のある地域に通い続けて、気がつけばもう15年が経ちました。
          高校までは奈良で育ち、大学から岡山に来ました。
          環境問題や農業に興味があって、大学ではそういったことを学んでいたけれど、正直あんまりピンとこなくて…。
          「もっとリアルな現場を見てみたい」と思って、大学の外に学びの場を探すようになったんです。
          そんな大学院時代に出会ったのが、棚田で活動する大人たち。
          彼らの生き方や考え方にふれ、「ここでなら生きていけるかも」って思いました。

          大学卒業のタイミングでは就職先も決まっていたんですが、「もう少し考える時間がほしい」と思って大学院に進学。
          でも、研究にはあまり身が入らず、研究室の人たちには迷惑ばかりかけてしまいました。
          大学院の終わり頃には大手企業から内定をもらったけど、心の中では「本当にこのままでいいのかな?」ってずっと悩んでました。
          修士論文もまったく進まず、周りに迷惑ばかりかけて3月の寒いアパートでひとり、何日も考え込んでいました。
          「もういっそ発表だけしたら修了させてくれる」とも思ったけど、どうしても気が進まず、結局、論文を出せずに大学院を修了できないまま内定も取り消し。家族からもしっかり怒られます。
          それでも僕は「地域でチャレンジしよう」と決めました。

          親にも相談せず、何日も引きこもって自分だけで決めた選択でした。
          当時、今ほど「地域おこし協力隊」が知られていたわけでもなく、給料も月16万円。
          正直、会社勤めしてたらもっと安定した未来があったかもしれません。
          でも、自分で決めた道だから後悔はしていません。
          その後、なんとか半年遅れで大学院は修了できました(内容はお世辞にも立派とは言えませんが…)。そこからはもう、地域にどっぷり浸かって――
          水路掃除、草刈り、米づくり、耕作放棄地の開墾、狩猟、ジビエ活用、古民家のDIY、いろんなことをやってきました。

          >そもそもなんでそんなことしてるの?
          もともと、環境や農業にちょっと興味があったんです。
          大学時代には仲間と一緒にネパールという発展途上国の山奥に行ったこともありました。
          そこでは、若者がほとんどいなくて、仕事もなくて、農業しかない…という状況を目の当たりにしました。日本の田舎と似ているな。
          でも、地域の中では「自然の中でちゃんと暮らしが回ってる」と感じる場面もたくさんあった。「経済的にも資源的にもムリのない暮らしって、日本の田舎の方ができるんじゃないか?」

          そんな仮説を持って、気がつけば今まで生きてきました。
          ただ、日本の田舎も飛び込んでみたら…まぁ大変です(笑)。
          空き家に耕作放棄地、放置された山林
          これらは「地域資源」って呼ばれることもあるけど、実際は「どうにもできない問題」として扱われがちです。
          しかも、それらの土地や建物って、国や県・自治体のものではなくてほとんどが個人の持ち物です。
          「地域資源を活かして良いことがしたい!」って気持ちだけじゃダメで、その土地を持っている人と信頼関係を築かないと、何も始まらないってわかったんです。

          だからまず僕がやったのは、自分の思いを押し出すのではなくて、「この地域に暮らす人たちとちゃんとつながること」でした。
          草刈りをする。
          借りた古民家をきちんと管理する。
          地域の人と話す。
          そんな「目に見える行動」を積み重ねて、「この人なら大丈夫」と思ってもらう。
          その繰り返しに、10年以上かけてきました。

          >これからの目標
          いまでは、140人ほどが暮らす上山地区の中でも、「大芦(おおあし)」という場所をフィールドに、大きなチャレンジができるようになってきました。
          これからは、「自然と向き合いながら、暮らしをつくり、それを次の世代につなぐ」ことを目指して、もう一度スタートを切ります。

          もう少し具体的に書くとこんな思いでやっていきます:
          1.自然と共に暮らす楽しさを分かち合いたい
          森や棚田、水などの自然の恵みをいただきながら、無理なく持続できる暮らしを目指します。
          土に触れ、手を動かし、自然の中での暮らしの喜びを、周りの人たちと一緒に感じていきたいです。

          2.昔からある知恵や技術を学び、今の暮らしに活かしたい
          棚田にまつわる農、林業、手仕事、食文化…。先人たちが築いてきたものを受け継ぎながら、現代の暮らしに合わせてアレンジしていきたいと思っています。そして、ここでの生き方・働き方を未来につなげていきたい。

          もし、この記事を読んで「田舎で何かやってみたいな」と思ってくれた人がいたら、ぜひ声をかけてください。すぐに大きなことができるわけじゃないけど、一緒にちょっとずつやってみることはできます。

          あなたの「やってみたい!」応援します!
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